今日は、それまでの将棋連盟のルールを覆し、サラリーマンからプロの棋士に転身したスゴい人が登場する。
皆さんはご存知だろうか?
プロ棋士になるのには、26歳迄という年齢制限があることを。
「奨励会員」として活動し、26歳の誕生日までに四段に昇段しなければならないのだ。
しかし、彼はその年齢までにプロ昇格を果たせなかった。
もうプロになる道はない。
それでも彼はアマチュアとして活動を続けて実力がつき、周囲からも彼にチャンスを与えようという声があがった。
前例の無い事だったが、奇跡的に特例で、プロ編入の試験が行われる事が決まった。
これを機に、アマチュアからプロへの編入が制度化された。
従来のように奨励会を経る事を必要とせず、プロ棋士となる事ができる。
制度をも変えた彼の活躍とは?
さあ・・・
プロ棋士
瀬川晶司様の登場です!
「とにかく自分らしく」
年齢制限で「もうプロになれない」となった時には、なかなか現実を受け入れられませんでした。
しばらくは何もする気になれませんでしたね。
あれだけ好きだった将棋の道具を全て捨ててしまい、「二度と駒を持つまい」と強く思ったほどでした。
でも、やっぱり将棋が好きだったから、アマチュアで続けていこうと思い直しました。
それまでは将棋だけだったので、まずは大学に行こうと思い、何となく恰好良さそうという理由で弁護士を目指しました(笑)
プロになった人達と会った時に、恥ずかしくない職業に就いておきたいという考えもあったかもしれません。
ただ、大学生の時にITに興味を持ち、エンジニアとして就職することにしました。
サラリーマンをしながら競技に出る。
そんな生活の中で、アマチュアの大会でも勝ち続け、プロ棋士にもかなりの勝率で勝てるようになっていました。
そんな時に奇跡が起きました。
「プロ相手にこんなに強いアマチュアなら、プロ編入のチャレンジをさせてあげたらどうだろう?」
周りの皆さんの本当に強い後押しで、将棋連盟が特例でプロ編入試験を開催してくれることに。
自分にとって、プロ棋士は一度は諦めた夢でした。
子供の頃からプロになることしか考えていなかった。
奨励会のときだって、当然プロになるものだと思っていました。
でも、ついにそれは叶わなかった。
「年齢制限」というルールがある以上、本来ならもう二度と夢見ることすら出来ないはず。
それがもう一度チャンスをもらえるなんて。
本当に奇跡だと思います。
これは自分ひとりの力ではありません。
周りの皆さんの後押しがあったからだと思います。
奨励会では結果が出せなかったのに、何故アマチュアでは勝てるようになったのか?
理由はいろいろあるとは思いますが、ひとつには、以前は「プロになること」を目指してのことなので、「対戦相手の良いところを消す」という、今思えば消極的な指し方でした。
ただ、アマチュア時代は「純粋に将棋を楽しむこと」が目的になったため、「自分の良さを活かす」という、より積極的な指し方へと変わりました。
これが自分自身に合っていたのだと思います。
どんなに努力しても思うような結果が出るかは分かりません。
でも、「とにかく自分らしく」。
前向きに努力していけば、周りも応援してくれるし、道は拓けていくのではないでしょうか。
◆著書『泣き虫しょったんの奇跡 完全版<サラリーマンから将棋のプロへ> 』(講談社文庫)
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