本日登場するスゴい人は、きものを通じて日本の蚕の素晴らしさと日本文化を伝承するスゴい人!
彼女はきもの文化研究家、きものエッセイスト、きものジャーナリストとして活躍し、多数の著書を執筆。
更に、多くの女優さんの舞台衣装やポスター、CM衣装のきもののスタイリングなども行う。
長年にわたる絹や蚕に関する研究の成果に対して、2013年には大日本蚕糸会より功績賞を受賞。
同賞の受賞はジャーナリストとしては初めての快挙であった。
さあ…
株式会社秋櫻舎 代表取締役
きもの文化研究家
中谷比佐子様の登場です!
「無条件の愛」
私はまだ女性が大学に行くのはとても珍しい時代に進学し、更に親の反対を押し切って雑誌記者の道に進みました。
当時は雑誌記者なんて水商売だと言われ、父に勘当されました。
それでも、仕事が面白くて仕方が無かったのです。
当時の雑誌記者は自分で企画をしなければページをもらえませんでしたので、日々企画を考えていました。
ある時、百貨店で「万葉の色を染める」という山崎斌さんと上田光乃さんによる草木染の展覧会を見ていると、「万葉集のあかねさす?の歌は染の話だ」と教えてくださったのです。
その時、きものと文化の結び付きを知って興味を持ち、山崎さんに教わりに行くようになりました。
私は出会いに恵まれていたのだと思います。
誰と出会い、誰から聞くかはとても大切なことだと思います。
それから、糸のことを勉強しようと信州に行って、蚕に出会ったのです。
蚕はとにかく差し出す、無条件の愛を私たち人間に差し出しています。
蚕は、8の字に糸を吐いていきます。
そして、きものは8枚の布をつなぎ合わせて仕立てます。
だれが考案したのか未だに不明なきものの形ですが、きものが宇宙の無限大の愛からできているとしか考えられません。
日本の近代国家は、蚕のお蔭で、絹産業によって成り立っていたという事もあり、私はせめて自分の生きている間は、日本の蚕のすばらしさを伝えていこうと心に決めました。
実際に着て、「この方が良い」と思う事を提案しても、呉服業界は男性社会。
効率や採算など男性の論理が優先されて、提案を受け入れてもらえない事ばかりでした。
呉服は他にはないシステムもあり、仕事に対して支払いを頂けなかったこともずいぶんあり、お金には苦労しました。
それでも、和という軸から外れずに、きものの事をしっかりやってきたからこそ、仕事にもつながったのだと思います。
きものの着方やあわせ方よりも、昔の人たちがどれほど蚕に対して愛を持っていたかを考えていれば、自然と着方もきちんとすると思うのです。
天と地の恩恵を忘れたとき、きものが消えると思っています。
今は、日本人が日本の事を知らなくて外国人のようになってしまいました。
日本の文化から遠ざかっていても、遺伝子にはきっと刻み込まれているはずですから、若者を引きもどして日本文化の細かい事を教える学院を始めようと準備しています。
私はきものから教えてもらった「日本人の魂」をこれからも多くの人に伝えていきたいと思っています。
◆ホームページ
http://iki-modern.com/