東京セレソンデラックス。宅間孝行という男が作り出した渾身の1作「くちづけ」
この舞台を見ることができる人は、大変幸運な人なのではないか。たった2時間の間に笑い笑いそして泣き・・・また笑い・・知的障害者たちが住むグループホーム「ひまわり荘」が舞台の本当にあった話を元に作られた“優しくも切ない物語”「くちづけ」。
舞台で繰り広げられる彼らの純真でわがまま放題の行動は、もはや他人事には感じられない。とある記事を目撃したあの日から10年近く温め続けてきた物語。
人を真に感動させるとは。さあ・・東京セレソンデラックス主宰宅間孝行様の登場です!
「寄り道にも花」
ありがたいことに日本一感動して泣ける舞台なんて言っていただける東京セレソンデラックスですが、僕は決して社会正義を貫く為や弱者を救いたいとの一心で舞台をやっているわけではありません。“舞台っていいじゃん、来て良かった”と感じてもらいたい。心に残る舞台でありたいと思い、シリアスなテーマにも至る所に笑いを盛り込みます。人は笑えば笑うほど、舞台上の登場人物(日常生活では接する相手に)を近く感じ、愛することができて親近感を覚えることができるのだと思うのです。そして心に残る舞台・人になれるのではないでしょうか。
10年程前、脚本家になる前の役者時代新聞の片隅に、とてつもなく辛く悲しい記事を目にしました。学生時代ミュージシャンを目指していた僕は、相方が辞めたことにより、一人でも活動できる役者の道から、歌手デビューを狙うという道を選び役者の道を安楽に歩みだした。しかし入ってみると想像を遥かに絶して、厳しい業界!他人に運命を委ね甘い夢をみてのんびりやるわけにはいかない。僕は劇団を自分で旗揚げして腹を括った。10年と絶対的なリミットを決めて進化を繰り返した。仲間達と共に。脚本家・演出家が離脱した時は、全て自分でやることを決めた。というか、余儀なくされた。お客さんと向き合い意見を取り入れて舞台を作っていっていた。そして今“ 一度、自分の本当に琴線に触れていたものを作りたい”僕は10年前に抱いたあの感情を思い出した。同時に、思い描いていたキャストが揃った。そして誕生したのが「くちづけ」。
ふと気付くと、ミュージシャンの夢を置き忘れてきた。そういう意味だと、音楽においては一度負けている。これは挫折か寄り道なのかもしれない。しかし、悔しくはない。
挫折と取るか、違うところで花が咲いたと喜ぶか。
自分の中できちっと満足できることこれが一番の幸せでしょう。
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